愛玩犬として、いまもっとも人気のあるシー・ズーだが、その起源についてはいまだ明らかではない部分が多い。
一説によると、祖先はチベット産のラサ・アプソではないかといわれている。ラサ・アプソは大変古い種のイヌで、2000年以上の歴史を持つ。古代チベットには、ライオンに変身するイヌを連れた神の話が残されているが、このラサ・アプソは外見がライオンに似ている。そのために特別な力を持つ「魔除けのイヌ」として古代チベットの人々に崇拝されていたらしい。
その後、唐の時代(17世紀)にチベットの統治者ダライ・ラマが、中国の皇帝への貢ぎ物としてラサ・アプソを献上し、以後、宮中でかわいがられてきたという。そしてペキニーズと交配を重ねた結果、現在のシー・ズーが誕生。ペキニーズとともに、長年にわたって宮殿の奥深くに住む門外不出の宝のイヌとして愛玩された。
今世紀に入ってから、シー・ズーはようやく世界の人々に紹介されるようになる。イギリスでの公認は1940年、アメリカでは1969年のことだ。日本ではジャパンケンネルクラブに1964年に登録された。そして、わずか30年という短い間に、見事、人気犬ナンバーワンの座に輝いた。
シー・ズーの魅力はなんといってもあのふさふさした毛並みだ。フルコートになるには3~4年はかかる。アゴや頬のヒゲ、耳や尾の飾り毛もたっぷり。鼻の中心に菊の花が咲いたような毛並みなので、「菊の顔をしたイヌ」とも呼ばれている。ただし、美しく保つにはやはり十分な手入れが必要だ。
とても陽気で社交性もあり、情愛も深い。利口だがイタズラも大好き。細かいことを気にしないおおらかな性格で、無邪気に飛びまわる姿は、まるで永遠の子イヌ。また、宮廷生まれのせいかプライドが高く、頑固(時にワガママ)な面もあるので、子犬のときからのしつけが大事。
成犬の食事は1日1~2回。小さいうちは胃の負担にならないように、2~4回に分けて与えるようにする。
短くつまった顔なので、食器は顔の幅くらいの大きさで、深すぎないものを選んであげたい。食後には必ず口のまわりを濡れたタオルで拭いてあげること。食事のときにヒゲをゴムでとめておいてもいい。
夏は食欲が落ちるので、ビタミンや卵黄など栄養価の高いものを与えるといい。
美しい被毛のためには毎日のブラッシングが不可欠。毛と皮膚の保護のため、シャンプーは2週間に1回以内に留めたい。年に一度、下毛が生え代わるので、抜け毛の覚悟が必要だ。